俺がオーシャンズパークに合流したのはすでに辺りが暗闇に包まれた頃…
すでに多くのメンバーが到着していて、焚き火で暖をとっているところだった。
俺はそんなメンバー達に手土産の串揚げを差し出した。
オーシャンズは結成時から全員の食べ物を全員で回し食いをする。
そんな独特の食べ方を俺達は昔からオーシャンズスタイルと呼び親しみ、そして貫いているのさ。
しかしオーシャンズも結成されてから早数年が経ち、高齢化という差し迫った問題に直面していることも事実だ。
結成当時はどんなに寒く雪の降る日だって、全員でケラケラ笑いながらすべり台を滑っていたものだが、もはやあの頃の訓練に耐えられるような肉体もメンタルも持ち合わせてはいないようにも感じ始めてるんだ。
こいつを見てくれ、これが数年前まで気温5℃は小春日和と豪語していた男の成れの果ての姿だ。
寒くて凍えてやがる。
小春日和どころか、もはや己の体温を維持するので精一杯の状態なんだろう。
でもこれが現実さ。
オーシャンズの高齢化問題は思った以上に深刻なんだ。
そうなってくるともはや訓練どころの騒ぎじゃなくなってくる。
全員がそれぞれの方法で自分の身体を暖める事だけに必死となっていたよ。
自分さえ暖かければそれでいい…
メンバーの脳裏に、これまでのオーシャンズでは考えられないような思いがよぎり始めていたのは紛れもない事実だった。
ストーブはもちろん、酒に逃げれる者はお湯割りで自分の身体を内から慰め、、、
酒が飲めない下戸衆は、お湯割りの代わりに熱々の甘酒を五臓六腑に染み渡らせていた。
そんな状況が続く中、、、
「そもそもこんな日に集合をかけた奴は誰だ?」
あまりの寒さで冷静さを失った俺たちは、ついに責任追及を求める声まで囁かれ始めたんだ。
この寒さで10人のオッサン達の精神状態もギリギリまで追い詰められてしまったんだろう。
亀裂の入ったオーシャンズ愛。
もはやそこに、あの頃のオーシャンズの面影はどこにも見当たらなかったよ。
…解散。
ふと脳裏に、この禁断の二文字さえ浮かんできた。
でも、、、まだ終われない。
これまで俺達オーシャンズはどんな訓練やピンチだって乗り越えてきた。
一人の死者も出さずにだ。
それは1人じゃなく、全員で乗り越えてきたからなんだ。
だから今回のピンチも必ず乗り越えてみせる。
きっとこれは神様が俺達を試すために与えた試練。
もう一度オーシャンズを結成したあの日の誓いを思い出し、過酷な訓練を共に乗り越えてきた絆を取り戻すんだ。
プレゼント交換会で。
互いに想いを込めたプレゼントを交換し合い、あの頃の気持ちを思い出すんだ。
でもそのプレゼントの中に、明らかに望まないモノが含まれているのも事実…
だから俺達は話し合った結果、じゃんけんで勝った者から順に選んでいくことにしたんだ。
じゃーんけーん、、、
ポイッッ!!!
あーいこーで、、、
しょっっ!!!!
あーいこーで、、、
しょっっ!!!
あーいこーーで、、、、
しょっっ!!!
こうしてプレゼント交換会という名の、俺達の絆を取り戻す会が始まったんだ。
全員で1回戦をした後は、勝った人と負けた人に分かれて2回戦が行われた。
真冬の屋外でじゃんけんをする10人のオッサン達。
どうだい、頭が悪いだろう?
でもな、こうしてる間にいつの間にか寒さなんてどこかに吹き飛んでいたのさ。
特に寒そうに凍えていたはずのジュリア(本名:林下清志)なんてな、さっきまでとはまるで別人のような燃え上がりようだったよ。
勝てば1位の争いをしている彼からは、まるでドラゴンボールを観ているかのような気合オーラを感じたんだ。
まぁ、実際にスカウターで測ってみたところで戦闘能力は2くらいなんだろうけどな(笑)
こうして激熱のジャンケンが終わり、最終順位が確定した俺達は1位を先頭に順番に並んだんだ。
この時の俺達のワクワク感が伝わるかい?
上手く表現することはできないが、強いて言うなら3時のオヤツを待ちきれない幼稚園児の心境ってやつかな。
そう、この時の俺達は間違いなくあの頃に戻っていた…
この時の俺達は、全員がワクワクが止まらない幼稚園児(保育園児含む)に戻っていたんだ!
そんな俺達!
オーシャンズ!
そして1位から順番にプレゼントが選ばれていった。
想いの込められたプレゼントに満足する者もいれば、、、
自分が望んでいたモノとはかけ離れたプレゼントを手に入れた者もいただろう。
でもな、間違いなく言えることがひとつだけあるんだ。
それは、、、
ここにいる全員が、絆というカタチには残らない最高のプレゼントを受け取っていたってことさ。
その後、失いかけていた絆を取り戻した俺達は気が済むまで語り合った。
どんなくだらない話も全員で聞き、そして全員で笑った。
そしてこの頃から誰も寒いなんて言わなくなっていた気がする。
なぜかって?
それは今となっては分からないが、きっと心が満たされていたからかもな。
こうして、大事な何かを取り戻すという究極とも呼べる訓練が終了したんだ。
翌朝。
俺達が目覚めると、オーシャンズパークは氷点下の世界だった。
(@Д@。。シクシク
そして撤収間際、俺達の朝食が終わったところで、、その事件は起きた。
チン(仮名)が愛用しているアイコスが紛失してしまったんだ。
昨日のプレゼント交換会で絆を取り戻した俺達はもちろん総力を尽くして探した。
自分のモノが紛失した時と全く同じ気持ちで必死に探し続けたんだ。
身の回り、各自のテント、トイレの中、芝生…
考えられるありとあらゆる場所を探し続けた。
しかし何分探そうが、チンのアイコスが見つかることはなかったんだ。
「もしかしたら…誰かが盗んでいったのではないか?」
そんな考えたくもない発想まで脳裏に浮かんできてしまうほど、どんなに探そうがチンのアイコスが発見されることはなかった。
そして誰もが諦めかけていた、その時、、、、
「みんな!!!ごめんなさい!!!」
チン(仮名)が突然、、俺達に向かって土下座をしてきたんだ。
そして、、
「…アイコスが、、、見つかりました。」
アイコスが見つかって喜ばしいはずなのに、なぜか申し訳なさそうな顔をして浮かない様子のチン。
しかしそれは発見された場所を彼の口から聞いた瞬間、全員がチンの気持ちに納得することになったんだ。
…え?
チンのアイコスが発見された場所がどこかって?
それはな、、、
チンが自ら履いていたスパッツの中さ(笑)
そりゃどんなに探しても見つかる訳がないはずさ。
なぜスパッツの中に、しかもお尻付近にあったのかは彼のプライバシーなことだからここで話すことはできないが、簡単に言うと大便後にアイコスごとパンツとスパッツを履いてしまったってようだ。
チンは本当に申し訳ないと何度も謝っていたが、俺達の固い絆はこれっぽっちも気にしちゃいないさ。
とにかく見つかって本当に良かった。
それだけさ。
こうして笑いに包まれた中で終わりを迎えたオーシャンズPART13。
次に俺達が集まるのは〇月〇〇日、場所は同じくオーシャンズパークだ。
この先、どんなに身体が老いてこようが俺達の訓練に終わりが来ることはない。
絆という名のオーシャンズ愛がある限り、俺達は走り続ける。
それじゃまた会おう。
俺達!
オーシャンズ!
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