およそ4ヶ月ぶりの開催となったねぶり会は久々の全員参加となりました。
今回、我々がラーメン作りの舞台に選んだのは印旛沼サンセットヒルズ。
朝9時に杉田家千葉店横のローソンで待合せをし、全員で本物の味の朝ラーをしてから現地へと向かいました。
途中、上質のゲンコツを求めて意気揚々とスーパーに到着した髭茶髪さん。
やっぱり彼にはベイシアがよく似合います。
この日の印旛沼サンセットヒルズはまさに快晴。
この千葉眺望100景にも選出された広大な景色を眺めながら、それぞれが最高の一杯を創り上げていくことになります。
しかし快晴とはいえ、この日の印旛沼サンセットヒルズはとてつもない強風。
通常のキャンプであれば強風で心配するのはテントやタープのことなんでしょうが、我々の口から出る言葉は「この風でスープが沸騰しなかったらどうしよう」という声だけでした。
しばらく悪戦苦闘はしたものの、何とか風を避けたキッチンスタジアムを作ることに成功。
これで心置きなくラーメン作りに集中できそうです。
早速、髭茶髪さんはまるで自慢のコレクションでも並べるかのようにゲンコツを並べ始めました。
「ずっと見ていても飽きない。」
そう語る彼にとって、きっとこのゲンコツ1本1本はロレックス時計のようなものなのでしょう。
対するシェイクさんも負けてはいません。
魚介系つけ麺らしく、鰹節やにぼしなどの魚を中心とした食材が並べられています。
一方、油そばを作るそうパパさん(以下ロビちゃん)のテーブル上だけはいつまでも空っぽのまま。
前回のねぶり会で殺人油そばという大失敗作を作ってしまいリベンジに燃えているはずのロビちゃん。
この余裕がどこからくるのか、我々には到底理解できませんでした。
ねぶり会の開催毎に着実に成長しているチャーシュー担当のガブさんも、すでに自宅でチャーシューを仕込んできたようでお気楽モード。
久々のキャンプを満喫しながら野良猫とじゃれ合います。
しかし髭茶髪さんには、そんな余裕は一切ありません。
スープ作りは時間との勝負。
骨、野菜、果物などあらゆる食材を丁寧に鍋へと放り込んでいきます。
さらにこの日の髭茶髪さんはスープ作りだけではありませんでした。
つけ麺のスープにゲンコツを使用したいと申し出たシェイクさんに、キャンプ用ハンマーを使ったゲンコツの割り方をレクチャーしてあげていたのです。
髭茶髪さん曰く、本来であればマスターするのに最低1年の修行は必要という事なのですが、シェイクさんの筋が良かったのか、ものの2分で1年分すべてを伝え終えているようでした。
げん骨割りからスープ作り、、、
穏やかなキャンプ場内の中で大忙しの2人。
しかし間違いなく、彼らは自らこれを望んでキャンプ料金を支払っています。
そしてスープ食材の最後を飾るのはもちろんこれ。
伝家の宝刀ねぶり骨です。
ねぶり骨が入っていないスープなんて抜け殻のようなもの。
スープの最後に我々のねぶり骨を入れることによって、初めてスープに命が吹き込まれるのです。
ご覧の通り、ねぶり骨の1本1本が完全なハンドメイドならぬネブリメイド。
一切の妥協をすることなく丹精込めて生成していきます。
生成中、気持ちが入り過ぎて気づくと目を閉じてしまっていることもしばしばですが、それくらい溢れる愛を注入している証なのです。
こうしてできた多くの愛の結晶体を、、、
臆することも後ろを振り返ることもなく、オグリキャップ並みの加速力で一気に鍋へと注ぎ込んでいきます。
こうして、ねぶり骨が入ったスープは瞬く間に強烈な泡立ちを見せ始め、命が吹き込まれたことを我々に知らせてくれるのです。
ただどんなに愛があろうと、日常生活の中で骨をねぶるという行為は、世間的になかなか受け入れてもらえないもの。
しかしこうすればアイコスを吸っているフリをして骨をねぶることも可能なのです。
スープ仕込みが一段落し、あとは長時間の煮込みのみ。
髭茶髪さんも相当気を張っていたのでしょう。
やり切った感のあるその顔に、少しだけ安堵の表情が浮かび上がってきました。
その後はしばらくの間、みんなで談笑。
スピーカーで吉村実の肉声を流しながら、ラーメン談義に華を咲かせます。
流れていく時間に伴い、スープも順調に乳化されていきました。
ナンバーワンじゃなくてもいい。
特別なオンリーワンを目指し、それぞれのスープが世界にひとつだけの花を咲かせていきます。
ただスープに保存剤が浮いているのは特別過ぎな気もします。
そして私はこの時、シェイクさんとスープのポジションに危機感を覚えました。
背中越しのスープという危険です。
彼のように全身に酒が回りやすい自滅タイプにとって、背後に鍋があるパターンは忘れて焦がすリスクが格段に高くなるように思えるからです。
しかしつけ麺専門店『酔軒』の看板を背負っている男に助言は無用。
私はあえてこのまま何も言わずに、シェイクさんの楽しいお酒を静観することにしました。
そんな中、先鋒隊としてロビ系油そばが動き始めます。
テーブルに並べられた数えきれないほどの調味料。
入れる配分はすべてが自分の勘任せ。
ケンタッキーフライド担担麺などを考案したロビ系ならではの自由なスタイルで油そばの味付けを作成していきます。
しかし調味料だけでは満足できなかったのか、なんとシェイクさんの大事な酔軒スープまで勝手に付け加えていました。
お前のモノは俺のモノと言わんばかりの暴挙。
賛否両論あるのでしょうが、使えるものは何でも使うという、これも一種のロビ系らしさなのでしょう。
味付けが完成したら麵を茹で始めて一気にラストスパートをかけるロビちゃん。
そう、盗んだスープで走り出した彼をもう誰も止める事はできないのです。
そしてそのタイミングで猫と戯れていたガブさんも突然チャーシューを切り始めます。
その表情は、さっきまでの陽気な表情とはまるで違う、完全なる仕事人『チャーシュー担当ガブ』の顔つきでした。
まさに阿吽の呼吸。
これが我々ねぶり会が培ってきた連携というものなのです。
自宅で作ってきたというチャーシューもこの見事な出来栄え。
もう彼は『ほぐし肉のガブ』ではありません。
彼の急成長には目を見張るものがあります。
そうなればもう一人のトッピング担当、『味玉のカモメ』だってだまってはいません。
高品質の卵を使用し自宅で2日かけて作った渾身の味玉を、アマゾンで購入した相棒『玉子半ぶんこ』でキレイにカットしていきます。
そして最後にメンマと青菜を加えれば、、、
『ロビ系特製 油そばリベンジ』
、、、の完成です!
スープのない油そばらしく、見た目からはどんな味付けがされているのか全く想像がつきません。
煮詰めた濃口醤油に塩を思い切り振りかけたようなしょっぱさで『殺人そば』と称された前回の油そばから約3ヶ月…
果たしてリベンジなるか。
その味は、、、
うん、旨い!
ただ前回の殺人的なしょっぱさをかなり意識したようで、今回はだいぶ守りに入った薄味でした(笑)
なので個性という部分では弱いと言わざるを得なく、挑戦を恐れないロビちゃんにしては少し安定させすぎたかなという印象です。
しかし普通に美味しく食べれる事はこのねぶり会ではとても貴重で難しいこと。
最後まで美味しく完食し、リベンジは見事達成という結果に終わりました♪
先陣を切ったロビ系油そばの成功という幸先の良いスタートとなったねぶり会。
残りの2人もロビちゃんの後に続くことができるのでしょうか。
そして二番手となるのはつけ麺担当シェイクさんです。
険しい顔つきで入念にスープの最終チェックをするその姿からは、『酔軒』店主として負けられないプライドをヒシヒシと感じます。
果たして自分がイメージした最高の味になっているのでしょうか。
そんな彼のスープを覗いて見ると、たくさんの謎の黒いブツブツが浮いていました。
「なにこのブツブツ…。」
これが削り節など魚介系の粉末などであれば良いのですが、何となく嫌な胸騒ぎがします。
そしてスープを移し終えた鍋の底を見た時、私の嫌な胸騒ぎはほぼ確信に変わりました。
「大丈夫大丈夫!こんなのどこのラーメン屋でも当たり前だから!」
そう言いながら茹でて冷やした麺を適当にドンブリへと振り分けていくシェイクさん。
「もう逃げられない。」
私はこの光景を眺めながら深呼吸をし、まもなく彼に食わされることになるであろう発ガン性つけ麺を食べる覚悟を決めておきます。
そしてトッピングも添え終わり、つけ麺専門店『酔軒』店主シェイク氏による、、、
『シェイク系 特製つけ麺』
、、、の完成です!
多彩なトッピングで綺麗に飾られた麺とドス黒いつけ汁。
この何とも言えないコントラストに不気味さを感じずにはいられません。
それでは頂きましょう。
ズルズルズル…
一口すすってみると、最初に丁寧に抽出された魚介類の豊かな風味が口内一杯に広がってきました。
「おお!? 旨いじゃん!」
これは予想を裏切る大番狂わせか!?
…っと思わせたのも束の間…
すぐ後から期待を裏切らないあの強烈な味が口内一杯に広がり始めました。
あぁ…やっぱりね、、、
想像した通り、、、
クソ苦げぇぇ…。。。
どんな旨味も一瞬で破壊する苦味という名の凶器。
苦味の恐ろしさを改めて思い知ることとなった私、、この発ガン性つけ麺を食べるのもここまでが限界でした。
味は絶対美味しかったはずなのに、、、焦げている。
焦げさえなければ絶対美味しかったはずなのに…焦げている。
でもこれが現実なのです。
「ぐあぁ…苦げぇなこれ。」
そう言いながらもつけ麺を食べ続けるガブさん。
過去にもガラコ系ラーメンや殺人ラーメンなどの化学兵器を完食してきたガブさんですが、そろそろ本気で全身に毒素が回っている頃ではないでしょうか。
彼の体調が心配でなりません。
髭茶髪さんはギブアップ。
いくら自分が毒ラーメンを作る毒博士でも、人が作る毒はアウトなようです。
まさかの失敗。
「なんで焦がしちゃったんだろうなー…」
焦がしてしまった原因がよく分からず、そう言いながら焼酎を一気飲みするシェイクさん。
しかしもちろんみんなはその答えが分かっていました。
それだよ、それ(笑)
…という訳で、今回も酒に飲まれて自滅という結果に終わってしまったシェイクさん。
繰り返される自滅。
彼はねぶり会加入以来、自滅率100%という驚異のアベレージをキープしています。
もしかしたらこれは髭茶髪さんの調味料依存症よりも根が深い問題なのかも知れませんね。
次回に向けて、もう一度一から自分を見つめ直して欲しいものです。
そしてもちろんラストを飾るのは髭系ラーメン。
沸々と湧き上がるスープはエネルギーに満ち溢れています。
しかしみんなお腹一杯という事で、少し時間を空けてから頂くことにしました。
この日は久しぶりに人の数とテントの数が一緒。
暑くて車中泊ができない夏だけは、みんなキャンパーに戻るようです。
2人のラーメン作りが終了して穏やかさを取り戻したキャンプ場での時間ですが、髭茶髪さんの戦いはまだ終わってはいません。
スローな時間が流れる中、ダイソー製の平ザルを巧みに操り麺上げの練習にもぬかりはありません。
そして日は暮れ、勝負の時間は刻々と近づいてきました。
楽しい会話で笑ってはいますが、髭茶髪さんの顔には緊張した様子も伺えます。
そして、「俺のラーメンに足りないモノは何なのだろう…」と口にする髭茶髪さん。
まだ彼の中で髭系最後のワンピースが見つかっていないようでした。
しかし突然、何かを思い出したかのように動き始める髭茶髪さん。
まさか最後のワンピースが見つかったとでも言うのでしょうか。
早々に麺を茹で上げ、身体を激しく上下にピストン運動しながらの高速麺上げ。
そのスピードとキレたるや、これまで我々に見せてきた麺上げとはまるで別次元のものでした。
「過去は清算してきた」と語る髭茶髪さんの思いがその行動にも表れていました。
そして人数分のドンブリに丁寧にスープを注ぎ、ほどよく湯切りされた麺を均等に振り分け、最後に家系三種の神器とも呼べるトッピングを乗せれば、、、
『髭系総本山 髭系ラーメン』
、、、の完成です!
これまで数々の不正に手を染めてきた髭茶髪さんが心を入れ替えて作った完全な髭汁100%ラーメン。
ある意味、現在の髭茶髪さんの力量がすべて詰まった集大成とも呼べる一杯だと言えます。
見た目的にはガラコ系の心配もなさそうですし生ゴミの匂いも漂ってきません。
果たしてその味は、、、
うん!美味しい!
これは間違いなく美味いラーメンです!
豚骨、鶏油、醤油、すべてのバランスが整ったまろやかで優しい味わいの食べやすい一杯に仕上がっていました。
そして何よりも、これまで幾度となく失敗を繰り返し、もうこれ以上失敗したくないという恐怖心から調味料の不正使用という過ちを犯し続けてきた髭茶髪さんが心を入れ替えて作ったこの一杯には、『感謝』という名の香味ペースト以上に大切な調味料が入っていました。
ラーメンを好きにさせてくれた吉村実への感謝。
そのラーメンを作れることへの感謝。
そんなラーメンを食べてくれるメンバーへの感謝。
そもそもそんな場を与えてくれたねぶり会への感謝。
そして何より、そんな自分のラーメンをどんな時でも無報酬で世界へ発信し続けてくれた親愛なるカモメへの感謝です。
きっと彼が思い出したものとは、ラーメンへの感謝の気持ちだったのでしょう。
大切な気持ちを思い出した髭茶髪さん…
もう彼が廃人だった調味料依存症時代に戻ることは二度とないでしょう。
「こりゃうめーな。」
これだけラーメンが旨いと、チャーシュー担当も頑張った甲斐があるというものです。
「うん、これ本当に美味しい。」
「おめでとう、今までで一番の成功だね!」
これまで幾度となく生ゴミのようなラーメンを食べさせられ続けてきたメンバーも感極まる思いがあるようです。
もちろん完食♪
髭茶髪さん、ご馳走様でした!
そしてコングラチュネーション!
勝利の一服に酔いしれる髭茶髪さん。
しかしラーメン道にゴールはありません。
明日からはまた、さらに美味しい一杯を目指してねぶり会一同精進していきましょう。
翌朝、ねぶり会でのラーメン漬けから解放された我々はゆで太郎で蕎麦をたらふく食べてから解散となりました。
…っという訳で、髭系ラーメンの成功という結果で幕を閉じたねぶり会ですが、まだまだ我々の目標はその先にあります。
髭茶髪さんのゲンコツを叩き割る音が聞こえる限り、我々の戦いに終わりはないのです。
完。
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